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#202 現像ソフトに頼るのは悪いこと?

こんにちは。カメラマンの大野朋美です。

Podcastの第202回をお届けします。音声で聴く方は一番下に。文字で読みたい方はここからどうぞ。

1.現像ソフトに頼ってしまうのですが…

先日、私の写真塾の会員さんから、こんな相談をいただきました。

撮影現場で、なかなか完璧な写真が撮れなくて、結局、現像ソフトに頼ってしまうんです、と。

そこで今回は、写真現像ソフトに頼るのは悪いことなのか、というテーマで話してみようと思います。

写真の現像ソフトとは、まずLightroomが有名です。世界的にメジャーな現像ソフトで、Adobe社から出ています。

その他に、シルキーピクスとか、各カメラメーカーからも、カメラを買った時に現像ソフトが付いてきます。最近はダウンロードするのが主流ですね。

こういったソフトを使えば、写真の明るさや色が変えられたり、トリミングもできます。まあ便利ですよね。

2.JPEG撮って出しとは

少し前に「JPEG撮って出し」という言葉をSNSでよく見かけました。

これは、Lightroomのような、ソフトで加工していない写真だよ、ということを言っているのですが、撮影者がそう断りを入れるのは、実は、観る人に、それでこれだけいい写真を撮りましたって言いいのだったりします。もちろん全ての投稿でそうだとは言いません。

ここにある価値観は何でしょう?

つまり、後処理をするのは褒められたことではないとか、もっと言うと、ズルいことであるというものです。

確かにその感覚は分かりますし、写真を撮る人の多くが、感じてしまうことです。

写真を撮る時、本来ならその場でカメラを適切に設定して撮るべきなのに、いい加減に写しておいて、後でパソコンソフトで修正してしまう。

少々暗い写真を撮ってしまって、失敗したなと思っても、現像ソフトを使って明るく修正できますし、トリミングで構図も変えられます。

現像ソフトは、修正や手直しに使えるのです。

そういった意味だと、褒められたことではなさそうです。

でも最初に話した写真塾の会員さんは、決していい加減に撮っているのではなく、
その方は、シャッターを切ったときは、それでいいと思ったんだけれど、後で見るとイマイチで、結局ソフトに頼って完成に持ってきているのだということを言われています。

ソフトに頼らずとも、その場でキチンと意図したように撮れるようになりたい、と言っているのです。

こういった悩みを持つことは、講師という立場からは大いに評価したいです。

昨今では、先に話した、「JPEG撮って出し」と言う言葉もすっかり見なくなってきました。

それほどRAW現像をする人が増え、だんだんと写真を現像したり、あとで手を加えるということが当たり前のことのようになってきてますし、そこへの抵抗感も減ってきているように感じます。ですので、このような真摯な態度は評価できます。

3.プロカメラマンはRAW現像ソフトをどのように使っているのか

さて、じゃあ私はといえば、ずRAW現像は必ず行いますし、ここに悩みはありません。

・・・あれ?

いま話してきたことと矛盾してると思われたかもしれませんね。

私の場合は、そもそも現像ありきで撮影しています。

例えば私はカメラマンなので、仕事は商業撮影です。

これは後でデザイナーが手を加えて使うということが少なくありません。

そういったケースでは、デザイナーが使いやすいように考えて、撮影します。

構図は、わざと空間を作って、そこに文字を入れられるように写したりします。写真的には、変に空間が残って、いい構図とは言えない写真になりますが。

明るさは適正露出で撮るようにします。明るすぎたり暗すぎると、白トビしたり、黒潰れが生じるからです。

でも最近のカメラの性能や、現像ソフトは相当優秀なので、現像段階で3段くらいの調整は出来るわけですから、まあ確かに、そこそこ撮れていれば、後で何とかなるというのも事実です。

明るさや色についてはそうなんですけど、、でも背景のボケに関しては、現場で調整しないと、後でどうにもならないということが起こります。

たとえば背景が大きくボケた写真を、後の現像でクッキリに変えることは出来ません。

クッキリに写した写真をボカす方がまだ出来ることですが、それでもレンズ特性を活かした自然なボケにするのは、かなりの腕が求められるでしょう。

また太陽やライトなどの光源を写す時、星型のように光芒を伸ばして撮りたいないなら、撮影時に絞りで調整する必要があります。

シャッタースピードも、これと同じようなことが言えます。

ブレた写真をクッキリには出来ないし、逆にクッキリ写っているものをブラスことは、出来なくもないけど、見る人が見てもバレないようにちゃんと作るなら、それなりの技術が必要になってきます。

私はそういったカメラや現像ソフトの特性を踏まえたうえで、どこまでを撮影時のカメラの設定で決めて、何をソフトで調整するのかを考えているのです。

写真を完成させる上で、トータルプロデュースしているのです。この立場に立てば、現像が悪いことだとは感じません。

でも会員さんのように、そこに幾ばくかの引け目を感じるなら、まだその辺りのことが分かっていない段階なので、その気持ちは正しいし、現場でちゃんと撮ることを目指した方がいいです。

4.写真講師からのアドバイス

だから私からのアドバイスとしては、撮影段階で、ギリギリまで詰めてやってみて、それでカメラの限界を知ることを、まずは勧めます。

そうしないと腕を上げたり、力を付けていけません。その上で、現像のことを学んでいくといいのです。

最後にもう一言、付け加えさせていただくと、現像って、でもそうとう奥が深いですよ。

現像することを、写真の修正と捉えているうちは、まだその本質が分かっていないのだと思います。

私などは、デジタル現像を、お手軽な、などとは考えていません。いつも、ああでもないこうでもないと試行錯誤しています。

・・・と言っても、時間を忘れるほどに楽しいからいいのですが。

結局センスが無ければ、いくら現像ソフトが優秀でも、人を感動させられるようないい写真にはなりませんから。

ではまた来週、火曜朝7時にお会いしましょう!

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