#238 芸術活動のための最初の一歩
Podcastの第238回をお届けします。音声で聴く方は一番下に。文字で読みたい方はここからどうぞ。
個人が芸術するために
こんにちは。カメラマンの大野朋美です。
暑さ寒さも彼岸までと言いますが、東京もだいぶ過ごしやすくなってきました。今日は中秋の名月だそうですが、これから徐々に秋が深まってくるのでしょうね。今回は、芸術の秋にちなんで、個人が芸術することについて話してみたいと思います。芸術といっても、商業的なことは抜きで、純粋芸術についてです。写真のテクニック的な話ではないので、それを期待されてたら、すいませんが少し違う話であることを、最初にお断りしておきます。
芸術することは何も芸術家だけのものではなく、誰でもその気になれば取り組めることです。
そうは言っても、芸術活動をしたいけど、何から取り組めばいいのか分からないものではないでしょうか。写真で言えば、自分の写真とは何か、写真で追及すべきテーマを求めていたり、自分らしい写真表現を探している方も多いでしょう。
そもそも芸術とは何かですが、もちろんこれは、いまだにハッキリと定義づけ出来ていないことですし、人類にとって永遠のテーマなのかもしれません。そんななか、よく言われていることのひとつに、「芸術とは言葉では表現できないことを、言葉以外の手段を使って表現すること。」というのがあります。私が今回、紹介したい方法も、ここにヒントがあります。
芸術するめには自分の内面に向き合い感じてみること
芸術に取り組むなら、少なくとも自分の内面に向き合うこと、向き合った結果を素直に受け止め、自分に合った方法で表現することが求められます。
なので、その最初のステップとして、自身の内面に向き合う方法を、ひとつご紹介します。
それは、何か対象となるものを、できるだけ言葉に頼らず感じてみる、ということです。
言葉というのは、人とコミュニケーションするためにあるものです。自分の考えを深めるものでもでもありますが、いずれにせよそのための手段です。素晴らしいものではありますが、その反面、何かを言葉で表現したり、定義づけすると、それ以上感じてみることが出来なくなりがちです。何が言いたいのか、例を挙げて説明します。
対象というのは、何でもいいのですが、分かりやすいところでは、あなたの周囲にいる人を例にとってみます。母親とか、子供とか、友人とか。そういった言葉で相手を何かに分類、カテゴライズしますよね。でも、一口に友人といっても、本当はみんな同じじゃない筈です。
今ちょっと、あなたの友達を3人くらい思い浮かべてみてください。
その3人の中でいちばん親しみを覚えるのは誰ですか? その順番を付けてみてください。
そう言われたら、ちょっと困りませんか? Aさん、Bさん、Cさんは、そんな単純な順列では計れないと思いませんか?
今お願いしたことは、実は答えが大事なのではなく、考える過程で、それぞれの友人が自分にとってどんな質感もっているのかを、感じてみてほしかったのです。
質感というのは、伝わっているでしょうか? 心に思い浮かべた時の感じ方です。脳科学者の茂木健一郎さんは「クオリア」という言葉で表現していますが、たしかに他にいい言葉がないんですよね。
で、そうやって、それぞれの友達が自分の心の中でどう感じられているのかを吟味してみると、段々と、「友達」っていう言葉自体が、けっこう曖昧で、乱暴だとさえ思えてきませんか?
Aさんの存在を感じるとき、他の人では変えられない、その人だけの特別な感触をもって感じられるはずです。友達という一言では、決して片付けられないはずです。
こんな風にして、目の前の景色や自分を取り巻く日常の環境を、できるだけ言葉を使わず、それをそのままに受け止めて感じてみることから始めるといいと思います。
それを感じた先に、ではその対象をどう表現したらいいのかと考える段階になるのです。
言葉にするのが大事な段階
この話を聞いていて、以前私がお伝えしたことと矛盾していると思った方もいるかもしれません。どういうことかというと、大野朋美のYouTube「みんなの写真塾ミニ版」シリーズなかで、イメージ言葉にしてみようということをお伝えした回があります。
目的とするイメージを言葉にしてみることをご紹介しました。観ていない、覚えていない、という方は気にされなくていいのですが。
あれは表現する段階での話です。伝わる写真にするための練習としてご紹介しました。ここではその前の段階、自分は何をどう表現するのかを見つけていく段階、感受性を育てていく段階の話なんですね。
さて今わたしは、写真塾の会員さんや、おさんぽフォトのクラブメンバーさんだけにお送りしている『大野朋美写真通信』を執筆、制作していてじつはその追い込み段階なのですが、その中でいつも書いているようなことから、その一端をご紹介してみました。
もっとそういう話が聴いてみたい方は、メンバーなっていただくといいのですが、でもまずは私のメールマガジンにご登録ください。
ではまた来週、火曜朝7時にお会いしましょう!