カメラ専門店の店頭にズラーッと、たくさんのレンズが並んでいるのを、見たことがありますよね。自分のカメラの機種に絞ってネット検索しても、やっぱりたくさんのレンズが挙がってきます。
なぜこんなにたくさんレンズがあるのでしょう。
値段の高いレンズと安いレンズでは、いったい何がそんなに違うの?そういった疑問を持った人に、レンズの違いや使い分けについて分かりやすく解説しています。
まずレンズの種類とそれらの違いについて、そして自分の求める写真を撮るために、どんな種類のレンズを選ぶといいのかについて解説していきます。
1. レンズの種類
レンズは、まず焦点距離による違いで、3つに分けられます。
焦点距離という言葉より、画角といった方が分かりやすいかもしれません。平たくいえば写る範囲です。
■ 標準レンズ 焦点距離 50mm前後
■ 望遠レンズ 焦点距離 70mmより大きい数字
■ 広角レンズ 焦点距離 35mmより小さい数字
焦点距離の数字が小さくなるほど、写せる範囲が広がります。
逆に大きくなるほど、範囲は狭くなり、その結果として、遠くのものが大きく写ることになります。
上:標準レンズ、下:望遠レンズ
写る範囲だけでなく、遠近感やピント範囲など、幾つかの点でも違いが出てきます。
それらについては、種類別の各項目で解説します。
*焦点距離とは
ピントが合ったときの、レンズと、センサーまたはフィルムまでの距離。
焦点距離は必ずレンズボディに表示されています。
2. 単焦点レンズとズームレンズ
1では、レンズを焦点距離の違いによって分類しましたが、その焦点距離が固定されるレンズと、変えられるレンズの2つに分けることもできます。前者を単焦点レンズ、後者をズームレンズといいます。
■単焦点レンズ 焦点距離は固定
■ズームレンズ 焦点距離が変えられる
焦点距離を変えられれば、その場で写る範囲を自由に決めることができるので、ズームレンズの方が便利に思えますが、単焦点レンズには単焦点レンズの良さがあります。
例えば背景を大きくぼかして撮りたいなら、それに適したレンズは、単焦点レンズであることの方が多いです。
ここまで解説してきたことを、一覧表にまとめました。
3. なぜレンズは種類がたくさんあるのか、その違いは?
上の表を見ただけでも、たくさんの種類があることが分かりますが、実際にはもっとたくさんのレンズが販売されています。
例えば、焦点距離が同じなのに値段の違う2種類のレンズがあったりします。
その違いはいったい何でしょう。
まず挙げられるのは、開放(絞り)値の違いです。
絞りはFという記号で表されますが、このF値を小さく設定すればするほど、背景を大きくぼかして撮ることができます。
F値は、設定できる範囲が、レンズによって異なるのです。
最小のFの値を開放値といいますが、この開放値が小さい数字であるほど、大きくぼかして撮ることができます。
そのかわり値段が少々お高い、という傾向もあります(^_^;)
ズームレンズの場合、話は少しややこしくなってきます。ズームレンズでは、焦点距離を動かすと、この開放値が変動するのです。
えっと、、何を言っているのかというとですね・・・
例えば、花を写そうとして構図を考えていたとします。
背景を大きくぼかして撮りたいので、Fは開放値に設定していました。例えばF2.0とか。
写す範囲をズームで変えつつ構図を決めていって、そしてシャッターを切り、撮ってみたら・・・あれ?!
いつの間にか、F値が2から4へ変わっているじゃありませんか。私、どこも触ってませんけど??
・・・
こういったことは、私の行っている撮影会や写真教室で、よく聞かれたりします。でもそうなんです。
ズームレンズでは、焦点距離を長くすると、つまり望遠にしていくと、最小F値が勝手に大きくなっていくのです。
つまりボケなくなってきます。
例えばこちらのレンズ。
「mm」とあるのが焦点距離を表しています。このレンズは70㎜から300㎜までズームできるレンズです。
その隣に「1:4-5.6」とありますが、4や5.6が開放F値を示していて、「―(ハイフン)」で、範囲が示されています。
つまりこのレンズは、75~300mmの範囲でズームできるけど、それに伴って開放値も4-5.6の間で変動しますよという意味になります。
ただ・・・実はズームレンズでも、開放値が変動しないレンズもあります。
だったら、そっちを選びたいところですが、でもそうすると・・・そう。値段がお高くなるのです(^_^;)
4.レンズアダプターについて
ここまでレンズの種類について説明してきました。たくさんの種類があると分かりますが、もちろんそれぞれカメラやメーカー別にラインナップがあるわけで、そうすると市場に出ている総数は膨大です。
メーカーが違えば、レンズが合わないというのは、なんとなく理解できますが、実際なぜ付かないのでしょう?
それは接続部、マウントといいますが、その形状や電子接点が違うからです。
CANON一眼レフカメラ
SONYミラーレス一眼カメラ
金色の点々が電子接点
とはいえ、自分の持っているカメラに、違うメーカーのレンズを付けたいという要望は少なくなく、そのために「マウントアダプター」というものが売られています。カメラボディとレンズの間に、これを挟めば機種やメーカーを超えて取り付けられるというものです。
例えばこのようなリング状のものです。
一眼レフとミラーレス一眼では、カメラの構造が異なるという問題もあります。
分かりやすいところでは、レンズの前にミラーがあるのと無いのでは、距離が変わってきますよね。そこを考えて筒状にした、こういったアダプターも出ています。
また同じ一眼レフで、同じメーカーでも、センサーサイズによって付けられるレンズは異なりますので、ここはよく調べてから購入するようにしてください。
5. 写りによるレンズの違い
標準レンズ、望遠レンズ、広角レンズは、画角(写る範囲)が変わるだけでなく、“写りかた”も変わってきます。ここからは、写真を見ながらこのことについて解説していきます。
まずこの写真。
35㎜レンズで写しました。それに対して、こっちは
16㎜レンズで写しています。16㎜だと屋根あたりが、すぼんで写っています。
広角になればなるほど、このような歪み(パースペクティブ)が強く出るのです。(パースがきついと言ったりします)
しかし逆に、このおかげで建物の高さが感じられるようにもなっています。また水平方向だと、例えばまっすぐ伸びる道を写すと、奥行きが感じられるようになってきます。
広角レンズの最たるものが魚眼レンズ(フィッシュアイ)で、180度写すことができます。
次にこの写真。
被写体がちょっと小さいので、望遠レンズで大きく写したのがこちら。
大きく写っているだけでなく、よく見るとレッサーパンダの背後のボケも大きくなっています。このように、レンズが望遠になればなるほど背景が大きくボケるという効果も得られます。
6. マクロレンズとは
「マクロレンズとは?」と聞かれれば、「小さいモノを大きく写すことができるレンズ」というのが一般的な回答でしょう。
でももう少し正確にいうと、最短撮影距離が通常のレンズより短いレンズです。要するに接写できるということですが、「接写」と言うと、くっつく程度まで近寄れるというイメージがあるのは私だけ?
小さいモノを撮ろうとするときに、出来るだけ大きく写そうとして近寄っていっても、これ以上はAFでピントが合わないというギリギリの距離が最短撮影距離です。ちなみに最短撮影距離は、レンズ先端からでなく、センサー(フィルム)からの距離。
望遠や広角など、焦点距離がどれであってもマクロレンズはあります。(メーカーがそれを出しているかどうかは別です)
普通のレンズより寄れるというのが特徴であって、例えばこの100㎜のマクロレンズは、通常の100㎜焦点距離のレンズとしても普通に使えます。
7. シフトレンズとは
シフトレンズというのは、大判カメラのようにチルト・シフトが出来るレンズです。レンズの上と左にネジが付いていますが、上のTと書いてあるネジがチルト用、左横がシフト用です。ネジを回すとレンズが動くので、調整して使います。
これを使えば、例えば建築物を撮影する時に遠近感を軽減できます。
また例えば、テーブルに並べられた料理の皿を写すとき、F値を最大に設定しても遠くの皿がボケてしまうような場合、被写界深度をさらに深くし、ボケを軽減することができたりします。
ちなみに街をミニチュア模型風に撮影することもできます。
8. テレコンバーターについて
通常テレコンと略したりしますが、焦点距離が変えられるレンズアダプターです。カメラとレンズの間に装着して使います。
白いのがアダプターで、これは焦点距離を2倍に伸ばしてくれます。
どんなレンズにも取り付けられるわけではないので、購入する前によく確認する必要があります。
最初から300㎜近い望遠レンズを購入するより、安く上がりますが、その反面、開放値が大きくなったり、AF性能が下がったりするリスクもあります。
9.レンズ沼について
ここで説明したことは、実は基本的なことで、レンズには他にも様々な特性があり、それによって描写の違いが生まれてきます。
「レンズ沼」という言葉を聞いたことがありますか?レンズの知識が増え、様々なレンズによる描写の違いが分かるようになってくると、あれも欲しい、これも欲しい、、いややっぱりこっちも欲しい・・・と、まるで沼にハマったようになって、出てこられなくなるという・・・(ヒュ〜)
初心者のうちは、まさか自分は大丈夫だろうと思っているものですが、写真にハマることと、レンズ沼にハマることは、同時に侵攻していくのです・・・。
おあとがよろしいようで(^ ^;)
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