プロカメラマン向ブライダル撮影ノウハウ

1.はじめに

私は東京都内を中心に、ホテルやレストランでブライダルスナップを長年やっていました。その経験から、駆け出しのカメラマンや、ブライダルカメラマンになろうと思っている人に、私の経験と知識をここに書いておきます。あまり掲載できる写真はありませんが、内容は実践に即したノウハウとなっています。
なお、いくつかの業者を通じて様々なホテル、レストランで行ってきた中で、共通である部分をお教えしますが、全ての会場がこの通りであるとは限りませんので、そこはご了承ください。またブライダル撮影には写真室での集合写真もありますが、そこは含みません。

2.服装・スタイル

1)服装は、黒のパンツスーツが基本。おそらくこれ以外を認めているところは、ほとんどないでしょう。シャツは白。男性はネクタイ。ネクタイは地味な色です。
2)靴は黒の革靴が基本。黒は絶対ですが、革は、それらしく見えていれば、底がゴムのものでもOK。
3)髪型は、カラーは基本は黒です。茶髪も濃い色ならOKのところが多いです。長さは、肩に掛かるくらいだと後ろでまとめるように注意されるかもしれません。
4)携帯・スマホなど音が出ることはNGです。特に式中は絶対にNGです。

3.ブライダルスナップに必要なカメラ機材

カメラは一眼レフ。最近はミラーレスもOKになっているのかもしれません。クリップオンストロボ(外付けフラッシュ)の付けられない入門機はNG。
ストロボは、どこのメーカーのものでも、ガイドナンバーが一番大きいもの。例えばキヤノンならEX600などです。でないと光量が足らないでしょう。発光部に白いカバーを掛けるように指導しているところも多いようです。

カメラとストロボは各2台ずつが基本です。2台というのは、業者によって若干その理由が違ったりしますが、まずは壊れたり不具合があった時のための保険です。
理由の2つ目は、1台は標準や広角系ズームレンズを、もう1台は望遠系ズームレンズを付けて、それら2台を常に肩から掛けて使い分けて撮るということです。

4.ブライダルカメラマンに必要なスキル

カメラの設定

記録はJPEGでMサイズというところが多いですが、それは私がここで言うことではないですね。聞いてみてください。ただ私の場合、納品はJPEGでも実はRAWで写していました。
ホテルもレストランも相当に暗いですし、写真の色も赤や黄色に被りがちですから。
連写を多様したり、1回のブライダル撮影で1000枚も写すような人もいるようですが、私は求められた枚数の倍以上、シャッターを切ることはないので、RAWでもいけました。
それと・・ギャラも比較的、悪い方ではなかったので、RAW現像する手間も掛けられたという事情もありますが。

ところでカメラの撮影モードは意外にシャッタースピード優先がお勧めです。絞り優先ならシャッタースピードがあまり落ちないようにあらかじめISO感度を高めに設定しておいた方がいいでしょう。
最初は、すごい写真を撮ってやろうと意気込む人もいると思います。もちろん素晴らしいことですが、ブライダル撮影は記録の意味が半分以上です。ブレた写真はもちろん納品できません。最初はとにかく失敗しないことを第一に考えることをお勧めします。

クリップオンストロボの扱い方

基本的に首を上に振って、正面から当たらないようにします。直当てだとどうなるかは・・・まあ知っていますよね。
天井バウンス、略して「天バン」でと言われていますが、天井にバウンスするというより、光の芯を外すためだと考えた方がいいです。天井にバウンスさせた光の影響はそれほどでもないので。ただそれでも、天井や周囲に光は反射しているので、壁や天井の色が被ります。その影響も頭に置いておいた方がいいでしょう。

撮影以外のスキル

ブライダルスナップのカメラマンに必要なスキルは、撮影スキルだけではありません。マナーや言葉使いも、ホテルマンなみに求められます。
おそらく大きなホテルなどでは、こう言われるでしょう。「カメラマンもホテルマンもお客様から見れば全てスタッフ。」
私は格式あるホテルでのお仕事も多かったので、ここは徹底して言われました。エレベーターでのマナーや、来賓の方々への挨拶など厳しく指導されました。

披露宴会場では同じ場所にずっと立っていると邪魔ですし、壁際に立っているときに壁にもたれかかるのもNGです。そして料理を運んでくる人の動線に立たないことも考慮します。

ビデオカメラマンが入っていることが多いので、その方との連携は大事です。ビデオカメラの前に立たない、ひとこと挨拶をしておくなどの配慮をして、一番いい場所を取り合うなんてことにならないようにします。

5.結婚式の撮影の全容

ではここから、何を写すのか全容を説明します。会場によっては必要ないシーンもあります。
1)お支度の撮影
2)新郎新婦アルバム用スナップ撮影
3)チャペルに入る前の説明、リハーサルの様子
4)控え室でのご親族の様子
5)挙式
6)集合写真
7)披露宴前のご列席者の様子
8)披露宴
9)お見送り風景
10)新郎新婦アルバム用スナップ撮影

スナップをどのタイミングで写すかは様々ですが、ここで2)と10)の2回入っているのは、ドレスのお色直しで着替えがある場合です。

ここまでフルに撮影に入るとだいたい6時間前後です。依頼されるとき、時間を短く言ってくる業者もありますが、実際このくらいはみておいた方がいいでしょう。
ではこのあとそれぞれの撮影内容について、詳しく説明していきます。

6.お支度の撮影

お支度風景から撮影する場合。まず大事なことは、最初にきちんとご挨拶できることです。例えばこんな風に。
「本日は誠におめでとうございます。撮影に入ります。カメラマンの○○と申します。今日一日、よろしくお願いいたします。」
そして「素敵なドレスですね」など、相手との距離を縮める何か一言をつけ加えるといいです。撮影には、新郎新婦とのコミュニケーションが大事で、そこがスムーズにいくかどうかは、最初のこの瞬間に掛かっていると考えてください。
よくある写真は、口紅をつけるとか、ベールを被せるシーン。ここは担当ヘアメイクさんに、そのシーンを撮りたいと言えば、上手く協力してもらえます。
支度ができ上がって部屋から出てくるシーンや、新郎と出会うシーンなどを写してもいいでしょう。

7.スナップ撮影

スナップ撮影の意味は、ドレス姿の新郎を美し写す、新郎新婦の仲むつまじい姿を写すこと、というのは誰でも分かっていることでしょう。でももう一つあります。それはドレスや衣装を記録に残すこと。この日に向けて、じっくり選ばれたドレスなので思い入れもあるはずです。必ず立ち姿で全身を入れ、前と後ろの両方から写しておきます。ドレスはそのラインがきれいに出るように気を遣ってください。
全身、バストアップを二人で、そして一人ずつ、そして新婦は後ろ姿も写します。

新郎新婦の並びの基本は、新郎が右。つまり自分の左に新郎が来ます。
ブーケや、ブートニアもしっかりアップで写しておきます。新婦のヘアスタイルが分かるように、少し後方からアップで写しておくことも。これは披露宴のときなどいつでもいいですが。

披露宴でお色直しをすることがほとんどなので、お色直しをした後のスタイルも忘れず、同じように写しておきます。

8.チャペルでの撮影

チャペルで写す内容、進行はほとんど以下の通りです。
1)新郎入場
2)新婦入場、
3)新婦のお父様から新郎へ手渡すシーン
4)神父の説教を聞いている新郎新婦
5)指輪の交換
6)ベールアップ
7)キスシーン
8)結婚証明書にサイン
9)参列者・会場全体風景
10)退場(フラワーシャワー)
式での写真が一番大事です。全て、NGは絶対に許されません。ブレやボケ、タイミングを外すなどないように、事前のイメージトレーニングが大事です。
また神父さんの言葉以外、静まりかえっている中を動いて写すので、そのあたりの配慮も大事です。

9.神社での撮影


神社で写す内容はほとんど以下の通りです。ただし神社では神主さんが“のりと”をあげているときに写すのはNGです。
1)入場されたご親族
2)新郎新婦入場
3)三三九度
4)指輪交換
5)玉串拝礼
6)会場風景

10.集合写真

挙式のあとに集合写真を写すことも少なくありません。
その多くは、カメラマンが高いところに立ち、下にいるたくさんの参列者を写します。広角20mm以下のレンズを持っておきたいです。全員にこちらを向いてもらわないといけないので、大きな声だけでなく、手を振るなどオーバーリアクションでいきましょう。そして最低3枚は写しておきます。連写した方が目つぶりの確率は下がります。写したら、必ずモニター確認しておきます。

時間が掛かると、「まだですか?」の空気が漂うので、ストロボやカメラの設定は、こちらを向いてもらう前に必ず確認しておきます。暗い部屋から外に出て来たタイミングであることが多いので気をつけましょう。
ちなみに、「早くしてよ」の視線に押されて慌てないことも大事です。何か場を和ませる言葉掛けを事前に幾つか準備しておくといいでしょう。

11.ブーケトス

ブーケトスも1回限りのことなので、初心者には緊張の瞬間です。様々な撮り方がありますが、一番失敗がないのが次の方法だと思います。
20mm以下の超広角レンズで、新婦のすぐ脇でしゃがみ、投げた瞬間に連写します。これで、投げた新婦と宙に浮いた花束、受け取ろうとする女性たちが全て入ります。

それからこのタイミングか、またはお色直しのとき、披露宴も全て終わった後に、こういったカットを撮っておきます。

11.披露宴会場の撮影

まず新郎新婦の入場シーンからです。入場する背後に控えて、ドアが開いた瞬間の後ろ姿を写す場合は、こちらにスポットライトが向いているので、それだけちょっと気にしておくようにします。
最初から会場内に控えておく場合もあります。どちらにしても、このあとスポットライトだけが当たる中を歩いていくので、ブレないようにシャッタースピードの設定を気を付けることと、スポットライトの当たり方、そして暗い中を移動するので、椅子やテーブルにぶつからないように、周囲に気を付けながら動くことが大事です。ぶつかりはしないと思うかもしれませんが、自分自身でなく、肩から掛けている2台目のカメラや鞄のことです。

高砂に着いたら、そこから新郎新婦の挨拶、主賓の挨拶と続きます。この時、二人はじっと止まっていて撮影しやすいので、二人の顔や会場全体風景など、どんどん撮っておきます。というのも、これが終わったら、高砂にはひっきりなしに来客があって取り囲まれていますし、食事が始まると立って動く人も多いからです。

あとで行われる友人のメッセージや出しもののシーンでは、2人の笑顔やいい表情が撮れますので、どんどん動いて撮っていきます。
もちろん喋っている友人も写すので、結構忙しいです。そのため、望遠系レンズの方が便利でしょう。

乾杯シーン

乾杯シーンのどこを押さえるかは、業者によって様々です。乾杯の音頭を取るのは主賓の方ですから、まずはその方がお話されているところを、そして乾杯の杯が上がった時は、新郎新婦を写す、または会場全体の雰囲気を写します。

ケーキカットシーンの撮影
ケーキカットは、まず一番大事なのが撮影場所。正面を取るようにします。そして必ず声がけして、二人共にこちらを向いている写真を、縦横両方写すようにします。広角レンズでケーキもちゃんと入れます。この写真をいわゆる“結婚しましたハガキ”に使いたいというご要望も少なくないので、きちんと押さえます。

ファーストバイトを行う場合がほとんどなので、そちらもお忘れなく。これは少しアップで写してあげるといいですが、新婦が食べるところは、食べる前の口を開けた瞬間とか、それほど見た目的にキビしくない瞬間にしておきましょう。

これは披露宴中の他のシーンもですが、何かを食べていたり、口に含んでいる瞬間は撮らないのがマナーと考えてください。

もし余裕があれば最後に、新郎新婦の背後に回って、カメラ(スマホ)を持って囲んでいる人たち全体の風景を写しておくのもいいです。

お色なおしで退場するときは、大抵は新婦のお母様やご家族ですが、退場するシーンをスナップするだけでなく、会場を出た後でもいいので、声を掛けて二人の記念の一枚を撮影してあげましょう。

12.キャンドルサービス・各卓写真の撮影

キャンドルサービスは、まず入場シーンから撮影します。スポットライトの光を使って、イメージ的に仕上げた方が雰囲気が出ていいでしょう。暗い中を歩くので、シャッタースピードに気をつけます。各テーブルでキャンドルに火を付ける時は、ストロボを仕様し、座っている方の表情も写るようにした方がいいかもしれません。

テーブルを回って記念写真を写す、いわゆる各卓写真は、だいたい後半に行われるので「巻きで」と言われることも結構ありました(笑)だからと言ってそんなに巻けないのが現実。というのは相手のあることだからです。席を移動してもらうので、こちらがしっかり声かけすること、椅子を動かすなど、どんどん動いてみせることがポイントです。

各卓写真も必ず3枚は押さえておきます。出来る限り絞りは大きめで、端の人にもピントが合うようにします。

よくありがちなのは、テーブル中央に背の高い花が飾られていること。そのため、並ばせてみたら顔がちゃんと見えなかったりピントがその花に合ってしまったり。背の高い花があれば、それが真ん中に入らない方向から撮るようにしましょう。

13.手紙・退場・お見送りの撮影

プログラムの最後は、ほぼ新婦の手紙を読むシーンから始まって、退場までの流れになります。
まずは高砂の脇で、新婦が手紙を読みます。新婦のアップや、それを隣で支える新郎と写す、また会場全体を入れたイメージカットを撮っておきます。

そして花束を持って、会場後ろに並んだ家族のところへ歩いて行きます。自分も一緒に歩いていくより、手紙を読み終える少し前に、先に後ろへ行ってひかえておく方が、失敗がないでしょう。その後の花束を手渡すシーンをきちんと押さえるのは意外と難しいですから、どこからどう写すか、確認しておきます。基本的には、新婦が手前にくる側から写します。
そして新郎やお父様が最後のお礼の挨拶を行います。ここでそれぞれが話しているシーンを写します。
退場したらカメラマンも出ていき、新郎新婦とご家族が並ばれるので、きっちり撮ります。

最後に、順番に出てこられる親戚の方々や同僚、友人との会話風景を撮っておきます。そして列の最後に自分も並び、今日のお礼を伝える場合が多いです。

14.来賓・ご友人の撮影

基本的に新郎新婦を写すことがブライダルスナップカメラマンのミッションです。事前に、ご家族やご友人もたくさん写してほしいとの要望をもらっていれば、写すようにします。

受付に立っているご友人も、受付をしている自然な姿と、並んでいただいた両方を写しておきます。

15.小物や会場の風景撮影

披露宴が始まる前に、ウェルカムボード、会場全体の風景やテーブルセッティング、高砂など写しておきます。ウェルカムボードは、ガラスだったりすることも多いので、映り込みに気をつけて。

指輪やブーケ、贈られたぬいぐるみや風船、花束なども忘れずに撮影しておきます。料理は特に、要望されなければ撮らない場合が多いですが、確認してください。

16.ブライダルカメラマンになろうとしている人へ

最後に、ここまで読んでいただいた方には、お伝えしておきたいことを書いておきます。

最近は知らないですが、以前はブライダルカメラマンを、業界内でちょっと下に見ていた人も少なくなかったと思います。ですが実際は、例えば雑誌で芸能人を撮影しているカメラマンに比べて、ブライダルカメラマンがスキル的に下であることは決してなく、それらは別モノなので比べようがないものです。主にスタジオで撮影しているカメラマンが、ブライダルスナップに入っていきなり上手く撮れるかというと、そんなことはありません。スタジオにあるストロボとクリップオンストロボでは、使い方が違うので、技術が別モノですし、ここまで話してきたので分かると思いますが、相当なスキル量があります。足かけやバイトくらいに思って始めると、そんな生やさしいことでないと気づくでしょう。でもそれだからか、ブライダルカメラマンは、現実、研修中に辞めていく人がとても多いです。もし今だにそんな空気がこの業界にあるなら、気にせず誇りを持って仕事をしていただきたいです。

ブライダル写真は、その世界観というか、独特の雰囲気がありますので、撮影技術云々だけでなく、言わばちょっと“ベタ”なシーンを臆せず撮影できるかということも大事です。もちろんそういった雰囲気の撮影が好きな人がするのが一番だと思います。

私は今はやっていません。その大きな理由は体調です。実際、ブライダルカメラマンを長年している人で、腰痛や四十肩など、体に何がしかの不調をきたした人は少なくありません。
6時間くらいの間、重いカメラ機材を肩から下げて、座ることなく動き続けます。水分補給もできませんので、まあそうなるのも想像に難くないですよね。なので長く続けるなら、体力作りも本当に大事なことです。
どうぞ頑張ってください。

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