1.はじめに
桜の季節がやってくると、やはり撮りたくなりますよね。でもその気持ちのままにシャッターを切っても、なかなか思うような写真にならないことも、少なくなかったのではないでしょうか。桜を美しく写すには、いくつか知っておきたいことがあります。実はカメラ初心者だけでなく、写真を撮る全ての人にとって、桜は決して簡単ではありません。どうぞこの後の説明を読んで、じっくり取り組んでください。
2.花を選ぶ
桜の花は小さくて色がとても淡いので、花や枝を選ぶ必要があります。レベルの高い写真にするには、まず場所を探します。探すポイントは、大きく2つあります。
(1)背景に気をつけること
満開に咲きほこっているような桜でも、近付いてみると、枝と枝の間の隙間が広いと分かります。桜を写すときは主役である花より背景の影響の方が大きくなりがちで、背景にかなり気を遣う必要があります。
この花を撮りたいなと思っても、その背景に太い幹や濃い色のモノが入ると、イメージが損なわれます。
なので主役である桜のように、背景も淡い色を選ぶようにします。青空はもちろん、むき出しの茶色い地面より、散った花びらが絨毯になっている場所がいいでしょう。
もちろん、公園などによくある立ち入り禁止の札や、そういったイメージを壊すものが入らないことにも気を遣う必要があります。
(2)花に直射日光が当たっていないこと
桜の花びらは薄いし、色も淡いので、直射日光が当たっていると、真っ白に写ってしまうか、写真全体が暗くなってしまいます。
これは写真が明るすぎたというより、直射日光が当たっていることが問題です。試しにこの写真を暗くしてみると、こうなります。
明るすぎたところを、ちょうど良い明るさにすると、花びらに濃い影が出てるのが分かります。強い影は、淡い花びらに大きく影響するので気をつけた方がいいでしょう。
3.桜の写真を撮るときの天候と時間
桜の季節は、天候が変わりやすく、曇り空や雨の日が多かったりしますよね。気温の差も大きく、夜桜見物に行こうとしたら、けっこう寒かったり。。
曇りの日もさまざまですが、どんよりとした曇りの日は、残念ながら避けた方がいいかもしれません。
この写真がイマイチな一番の理由は、構図や明るさといった問題ではなく、どんよりとした曇り空であること。背景がグレー(白)になっていることです。
晴れていて青空が背景にくれば、こんな風にスッキリと爽やかな写真になります。
晴れているようでも霞みがかかっているような空だと、やっぱり白くなってしまいます。青空だけどちょっとスッキリしない空だな、と感じるときです。
晴れていればいつでもいいのかというと、そんなこともなくて、太陽の出ている方向にレンズを向ければ、空が白く写ってしまうか、または花が暗〜く写ってしまいます。経験ないですか?
なので太陽が出ていない方向にレンズを向けて写すようにします。写したい桜の木が決まっているなら、あらかじめ太陽の出ている方向の時間帯を調べておいた方がいいでしょう。あとは、たまたま上手く太陽が雲で隠れたときが狙い目でしょうね。
4.曇りの日の桜の撮影
曇りの日は撮影が厳しいと言いましたが、一口に曇りといっても様々で、
ここまでどんよりとした日は難しいかもしれません。でも薄曇りで、少し光が感じられるようならこんな風に、
空はなるべく入れないような構図を考えてみてください。
あとは花の色が濃い種類の桜を選ぶとか。
5.カメラの設定
桜を写すときのカメラの設定は、まず背景を自分好みにぼかして撮りたいと思うので、絞り優先モードで撮影するか、マニュアルに設定して写します。こういったダイヤルがカメラに付いていませんか。
これを回してAv(A)に合わせます。そして表示されるFの数字を調整すれば、自分の好みにボカして写すことができます。数字が小さいほど大きくボケます。
ここで気をつけたいのは、桜の枝は少し風が吹いただけでも大きく揺れるので、シャッタースピードも気にしていた方がいいでしょう。少し揺れているくらいなら、1/200以上あればブレは防げます。そういう意味でマニュアル(M)に設定して写した方が失敗なく確実です。絞り優先モードで撮影するときは同時に、表示されているシャッタースピードもちょっと気に掛けるようにしてください。あまり大きく揺れている間は、ピント位置もずれるので、少しおさまるのを待った方がいいですね。
次にソメイヨシノなど白に近い、淡い色の花を写すなら、暗く写ってしまう場合が多いです。そこで少し明るめに写るように補正しておきましょう。
Av/Aモードで撮影するとき、明るさを変える方法は、この[+/−]と書かれたボタンを使います。
このボタンを押すと、目盛りが出てきますので、これを+方向へ。動かせば動かすほど、明るくなっていきます。
さらにこの白に近い淡い色を少しでも鮮やかなピンクに写したかったら、カメラを「風景モード」に設定したり、「ビビット」、「鮮やか」といったところに設定してみてください。
もちろん後でRAW現像したり、アプリで加工するなら必要ないでしょう。
6.桜を写す上手い構図とアイディア
(1)枝の方向を考える
桜の木の一部を写すときは、花より枝の方が目立ちやすいので、写すときは枝がどういう方向に伸びているのかを考える必要があります。太くて目立つ枝が画面を水平・垂直に横切るような構図だとダサく見えがちです。枝が斜め方向に伸びるような構図にするといいです。
(2)前ボケを利用して桜を囲む
ふんわりとしたイメージに写すなら、前ボケを利用したこんな写真はいかがでしょう。
一番手前の花を撮るのではなく、奥にある花を撮るようにします。そのとき手前の花が画面に入るようにすれば、このようにボケて写ってくれるので、ふんわりとした演出になります。奥の花と手前の花の距離が離れれば離れるほど大きくボケます。
(3)桜で彩られた風景を写す
桜の季節は日本中あちこちの風景に桜が添えられます。そんな風に考えて、見なれた風景を桜で彩るというイメージで写してみてはいかがでしょう。
(4)散った花びらを写す
絨毯のように花びらで敷き詰められた地面を写すのはお勧めです。また舞い散った花びらがちらほらとうつっているのも、春のほのぼのとしたイメージになります。
桜の花びらが舞い散るシーンに出くわしたら、何とか上手く写したいと思いますが、なかなか上手く写すことができませんよね。これはまず、たくさん散っている場所でないと難しいです。もしそういうシーンにうまく出くわしたら、散っている花びらを目立たすために、望遠レンズを使うことがポイントです。
標準や、まして広角レンズだと、よほどタイミングがよくないと難しいでしょう。また上の写真ほどではなく、時々風が吹いたらハラハラと舞い散るくらいなら、ピント位置をどこかに固定し、絞りも絞り気味にして、そこに落ちてくるのをじっと待つしかありません。
7.雨の日の桜の写し方
雨の日は、「しっとり」というキーワードを頭において、そういった構図を考えます。枝が空へ伸びる構図よりは、このように枝垂れる構図の方が似合います。
桜の花をアップで、水滴に濡れた花の写真を写せば、しっとりとした雰囲気の写真になります。
地面に落ちた花びらを写して、シュールなイメージだったり、散った後の寂しさを表現してみてもいいかもしれません。
ただ踏まれた花びらはやめておいた方がいいでしょう。ここに写っている花びらも、濡れてはいますが踏み荒らされていない場所を選びました。
8.夜桜の写真の上手な撮り方
(1)場所えらび
最初に桜を美しく写すのは簡単ではないと言いましたが、夜桜はさらに難しいです。まず夜桜は、撮影する場所をよく探す必要があります。雰囲気がいいと感じた場所でもきれいに写るとは限らず、それはカメラの設定の問題だけではないのです。
このように提灯の明かりだけで照らされている場合、提灯ばかりが明るく写って、肝心の桜が暗くなってしまっています。ですので提灯やライトは入れないで写すようにするか、またはこのように桜だけをアップで写してもいいでしょう。
桜まつりの会場全体が明るい場合はこの限りではありません。
そして夜桜を写すなら、灯りが点灯しつつも空が真っ暗になる前の、日暮れ後もお勧めです。提灯やライトの明るさと周囲の明るさの差がそこまで激しくならないからです。
9.夜桜を幻想的なイメージに写す方法
夜桜って、ちょっと幻想的なイメージだと思いませんか。ライトアップされていたり、桜まつりの会場を歩いていると、そんな雰囲気に見えますよね。でも写してみると、そんなイメージに写らないと残念に感じたことはありませんでしたか。
夜桜を幻想的なイメージに写すアイディアとして、こんな写真はどうでしょう。
これは色をわざと変えて写しています。写真の色はホワイトバランスで変えられます。
色を変える方法は、カメラ本体か、MENUボタンまたはINFOボタンの中に、「ホワイトバランス」とか「WB」というマークがあるので、そこで変えます。このような表示が出たら、電球マークにしてみてください。全体が青っぽく写ってきます。またはこの写真のように「K」というところの数字を一番小さい数字にしてみてください。
10.桜の写真は難しい
桜を写すのは難しいって最初に書きましたが、なぜなのか、ちょっと深い話をこちらでしています。桜の写し方なども話していますので聴いていただければ。
Podcast「旅とカメラと・・・ここでないどこかへ」#108
※podcastはappleが提供するインターネットラジオです。
それでは今年はぜひこれまで以上に、イメージに合った桜の写真を写してくださいね!
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